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零戦で戦死、飯田中佐の記念碑慰霊 「喜んでいる」遺族、感慨深く産経新聞west2016.12.28

在りし日の「飯田資料室」の写真を眺める義昭さん、喜久代さん夫妻=27日、山口県周南市(大森貴弘撮影)在りし日の「飯田資料室」の写真を眺める義昭さん、喜久代さん夫妻=27日、山口県周南市(大森貴弘撮影)

米ハワイ・ホノルルを訪問中の安倍晋三首相は27日(現地時間26日)、現地にある複数の慰霊施設を訪れては献花を行い、黙祷(もくとう)をささげた。そのうちの一つ、真珠湾攻撃で戦死した飯田房太(ふさた)中佐の記念碑は、銃火を交えた米軍側が、その勇気と献身的な姿勢をたたえて建立したものだ。日米和解の象徴的な存在である慰霊碑への首相訪問。遺族らは、その姿を感慨深く見守った。(大森貴弘、市岡豊大)

「安倍首相には本当に感謝しかない。『ふーちゃん』はもちろん、あの戦争で亡くなった全ての人が喜んでいるような気がします」

飯田中佐のいとこ、義昭さん(88)=山口県周南市=はこの日、妻、喜久代さん(87)とともに安倍首相のハワイ訪問を伝えるテレビのニュースを食い入るように見つめ、こうつぶやいた。

昭和16年12月8日、零式艦上戦闘機の搭乗員だった飯田中佐は、空母「蒼龍」から出撃し真珠湾攻撃に参加。米基地を攻撃中に燃料タンクに被弾し、帰投できないとして基地の格納庫めがけ突っ込み戦死した。享年28。攻撃参加時は大尉だったが、戦死後に2階級特進し中佐となった。米海軍も軍人として最後まで向かってきた飯田中佐をたたえ、遺体を基地内に埋葬。46年には記念碑を建立し、今も海兵隊が維持・管理している。

真珠湾攻撃で戦死した飯田房太さん真珠湾攻撃で戦死した飯田房太さん

真珠湾攻撃後、新聞などで最期の瞬間が詳細に伝えられた飯田中佐は「軍神」としてたたえられた。しかし戦後は一転、「真珠湾攻撃が敗戦の発端だ」などと周囲から批判を受けた。

「戦時中、『飯田房太生誕の家』と書かれた木の標識は最敬礼されたが、終戦の日には何者かに引き抜かれてしまったと聞いている」。戦後も飯田中佐の母に励ましの手紙を書き続けた縁で、飯田家の養子となっていた義昭さんと結婚した喜久代さんはこう話す。

普段は物静かで、小中学校の同級生からも「あんなおとなしいやつが勇敢なことをしたもんだ」と言われていた飯田中佐。「素顔を多くの人に知ってほしい」と考えた夫妻は60年ごろ、自宅を改装して「飯田資料室」を作り、遺品や写真を展示した。資料室はすでに閉鎖したが、遺品は今も自宅に丁寧に保管している。

その後、米軍との交流が始まり、飯田中佐が最期にかぶっていた飛行帽や、乗機の零戦の焼け焦げたシートなどが返還された。

そうした歴史を積み重ねた中で実現した首相訪問。「戦争で命を散らした人がいることを思い出すきっかけになってくれれば」。義昭さんは、こう願っている。


飯田房太

飯田房太さん飯田房太さん

飯田 房太(いいだ ふさた、1913年(大正2年)2月12日 - 1941年(昭和16年)12月8日)は、日本の海軍軍人。海兵62期。空母「蒼龍」戦闘機搭乗員として真珠湾攻撃に参加。戦死による二階級特進で最終階級は海軍中佐。ウィキペディア


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